言わぬが花♪

Mr.X

 朝から雨が振ったりやんだりと、ぐずついた天気の土曜日に、高校サッカー新人戦男子準決勝が行われた。
 勝ち残った2チームが、翌日の決勝戦に進み、この地区の頂点を決めるとあって、寒空の下、熱の入った試合が展開された。

 6台ある中継カメラの内、半分の3台が風上方向にレンズを向けているために、時折降る雨を受けて画像が滲んでいる。
 スタンバイ時に用意されたレンズ拭き用のタオルは、やがて水浸しで使い物にならなくなり、映像から輝きが消え、絵のキレも悪くなった。

 そこで力を発揮するのが、実況のアナウンサーとピッチのリポーターだ。

 雨に濡れて不安定な画像、不安定なピッチだからこそ『見所のある試合』なのだとばかりに、声があがる。

 ボールを受けた選手がドリブルで駆け上がる。隙を突かれたディフェンスがシュートコースを潰そうと体を入れる。フェイントでかわそうとした選手が濡れた芝に足をすくわれ、倒れたまま横滑りしていく。ボールはデッド。相手チームがスローインする間に、ピッチからのリポートが入る。

「放送席、放送席。グランドの中央に比べ周辺部はまだ雨水が残っていて、かなり厚い層になっているようです」
「なるほど。サイドからの攻撃に注意が必要ですね。リポートありがとうございました」
 フィールドの中央部と周辺部ではボールの跳ね方も違う。そう想像させるだけでも、普段の試合よりも面白そうだ。
 コメントからイメージさせる。詳しく説明してしまうのは『野暮』というものだ。
 だから『そうなると、中央と周辺ではボールの跳ね方も違いますね!』などとは言わない。
 言わぬが花なのだ。

サッカーイントレ上のカメラ

2 thoughts on “言わぬが花♪

  1. おはようございます♪
     言わぬが花、、、なるほど、、ね。
     普段でも、言わぬが花、、ありますね^^

  2. ももさん 書き込みありがとうございます♪
    実況解説などしゃべる仕事では『言う』ことが使命みたいに感じますが、
    何でもかんでもという訳ではないようです。

    プロのしゃべり手でさえ『言うことをセーブしている』んですね!

    自分はおせっかい焼きすぎだとよく言われるのですが。
    これからは気をつけたいと思います。

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