GOZALU 解説

GOZALU

 この電算の専門学校には一人、幕末の時代からタイムスリップして来たかのような女の『もののふ』がいる。
 小柄で可愛いが、甘い顔はいっさい見せない。妥協知らずの耐え忍ぶ忍。
 現代版『くノ一』が、土屋志保。通称『ござる』だ。

 設定にこれといった意味が無ければ、あまり詳しい説明はしない。誰それ博士が作ったタイムマシーンでやって来たとか、ここにしかタイムマシーンが出てこないのならしないほうがいい。ナンセンスじゃん、力入れて説明しても

 夏の日差しが和らいだその日、ござるは朝から学校裏の駐車場にいた。日の光の中、ベンチに腰掛けて足を組み始めていた。
 隣で本を読んでいた宮本洋輝が、体に巻きつけるような足組みを始めたござるに声を掛けた。
「それって、胡坐(あぐら)?」
「胡座(あぐら)ではござらん」
 ござるは神聖な作業中に声を掛けられたのが気に障ったのか?少し不機嫌に答えた。
 宮本は巨漢で、顔はござるの2倍、体はござるの3倍ほどあり、ベンチに二人並んで腰掛けている風景は、非常に不釣合いで滑稽だった。しかも、その大男に食って掛かる小柄な女の子、ござるの姿が、さらに輪を掛けて奇妙に思えた。

 宮本は思い掛けない対応に少したじろぎ、元々読んでいた本でござるとの間に境界線を張った。本のタイトルは『誰もが寄ってくる!モテ男のデート術』

 のちに羽虫が寄ってくるように仕向ける伏線第一弾。読み出してから早めに仕掛ける!

ト書きに『女を振り向かせる声の掛け方』と書いてある。しかし、せっかく声を掛けたのに、ござるは足を組むのに夢中だった。

 ござるに声を書けたのが必然となる所以がHOW TO本。これを読んでいたために、ござるに声をかけたのだという理由付け。

こいつ、同じクラスのファッションリーダー細川奈穂のように、足を綺麗に見せようとか長く見せようなど考えないタイプだ。しかもこの座り方、女としてどうなの?  

 のちに出てくる階段の場面につながる伏線第二弾。テンポよく伏線もちりばめておく!

 かかわるのはやめよう!そう思った時だった。ござるの方から声が掛かる。
「これは我が家に伝わる精神統一の構えでござる。拙者、まだまだ修行の身ゆえ、これで何があろうと動じること無く、一日をおだやかに過ごす事が出来るのでござる」

 結局専門学校というのは、修行人の集まりであるという作者のお膳立て部分。本を読んでいた登場人物も、修行の身と同じ。だからHOW TO本。専門学校は、興味を持って多少の知識のある学生が入って来るけど、もっと知識のある人間や思っていた世界とは違うなど、斬られまくる場所であるという作者の思い入れ部分でもある。

 ござるが目を閉じて、瞑想が始まった。
「ああ、そうですか」
 宮本は上の空で返事をして、ござるに背を向けるように座り直した。

 校舎裏のこの駐車場はほぼ日が当たらないのだが、二人が座るベンチだけは、スポットライトのように日に照らされていた。春の日差しを思わせる暖かさの中で、沈黙が二人を包んでいた。しばらくすると、静寂を引き裂くように、一匹の虫の羽音が聞こえて来た。ブーン。
 宮本の本の前を横切り、鼻先をかすめる。2周3周と飛び回る虫に、宮本は読書を妨げられ、落ち着かない。少し苛立ちを感じさせる。ブーン。ブーン。
 周りが静かなだけに、羽音がやたら耳に付く。
 隣で瞑想を続けるござるは、こんな時であろうと少しも動じることが無いのだろうと振り向いてみると、眉間に深いしわを寄せ、まぶたは怒りで早打つ脈のように、ヒクヒクと動いていた。

 あきらかに動揺している。
 精神統一をして、何事にも動じないと言っておきながらのこの態度に、宮本はたじろいだ。
 ブーン。小指の先ほどの羽虫は我関せずで、挑発するかのようにござるの顔の周りを飛び回っている。耳元を飛ぶ。鼻の上で旋回する。背中に回ったかと思うと、また前に回りこむ。

ここではあえて『ハエ』などと特定しない。読者の想像に任せる。この『羽虫』。作者の思惑としては『修行を邪魔するもの』として登場させているので、あえて確定しない。ハエと書いてしまうと『ハエ』になってしまうし、ゴキブリと書けば『ゴキブリ』になり、それ以上の発想を生まない懸念がある。

 すでに開かれ、それを睨みつけているござるの目は、殺気を帯びていた。そのただならぬ空気を感じたのか?羽虫が動きを止めた。羽を休めた場所は、宮本が開いていた本に上だった。誰もが寄ってくる!モテ男のデート術。

先ほどの『伏線第一弾』を、ここで炸裂させておく。

 やっと静かになった。そう思った次の瞬間。一陣の風が宮本の手元を通り過ぎ、音も無く本が真っ二つになった。

「へ?」
 どこから取り出したのか?隣にいたござるは長身の太刀を振り下ろしていた。

ここも『どこから刀を取り出したのか』を説明するのはナンセンス。そこを読んでもらいたい内容ではない。

 仕留めた。一瞬の静寂に、目障り耳障りな羽虫は、HOW TO 本もろとも切り捨てられたかと思われた。しかし、羽虫は再び活動を始めた。攻撃に腹を立てたかのように、羽音はさらに激しく大きく聞こえる。そして、宮本の眉間に止まった。宮本本人は、それに気付いていない。ござるが太刀を脇に構えてにじり寄る。
「え?なに?うそ」
 ヤラレル。宮本の顔が恐怖に引きつる。しかし躊躇無く太刀が振り抜かれた。
 焼きの入っていない模造刀だが、ござるの太刀筋の威力は抜群だった。宮本は反り返るようにして倒れ込む。
「波阿弥陀仏」

作者の思い→専門学校では、本ばかり読んでいてもダメ。本を読んでいた登場人物は、本諸共倒されて『それ』を表現。

 ござるが手を合わせて、事件を締めくくろうとした。
 ホッとしたのもつかの間。しばらくして、羽音は続いた。
 ベンチを後にして校舎の裏口、扉の細い隙間から校舎の中に入って行く。
「逃がさん」
 倒れた宮本を踏み付けながら、ござるは猛ダッシュして羽音に続く。

 校舎に入ってすぐ、事務室を回り込むように進むと最上階の4階まで続く階段の前に、エントランスホールがある。今そこでは、昨年末に行われたゲームショーのパネル展示が準備されていた。どの写真を中央に飾るべきか?クラスを二分するグループの長、女組の北村舞と男組の大橋潤が、パネルを手にしながらもめていた。

 羽虫がその二人の間を進むと、続いて駆け込んで来たござるが太刀を真横に一閃。
北村と大橋が左右に弾け飛ぶように倒れ込み、道を開ける。

作者の思い→専門学校では、競い合っていてもダメを象徴する場面。

 続いて近くにいて展示を手伝っていた吉岡里佳と山本聖子も、手にしていたパネルごと袈裟切りの太刀を受けて倒れた。

作者の思い→専門学校では、手助けしていてもダメを象徴する場面。

「邪魔」

 一連の騒動で羽虫を見失っていたござるだが、階段を上っていく羽音に気付き、2階へと向う。

作者の思い→修行の邪魔をするモノは、調子づく場面。

 途中の踊り場にスラリと伸びた綺麗な脚が見えてきた。立ちふさがる細川奈穂の腹部に、駆け上がる勢いのまま膝を叩き込むと、細川は階下に崩れ落ちて行く。

このくらいの間隔で。先ほど張っておいた伏線第二弾を炸裂させておく。文頭は先ほど紹介した『綺麗な足』の様子から入り、人物の名前は後で披露する。いよいよ来ましたか!感を想像させる。

対照的にござるは一足飛びで2階に到着しようとしていた。

 2階廊下で江南スタイル(カンナムスタイル)を踊りながら階段に向って来た前川翼と今村公平を一瞬で切り倒して3階に向う。

作者の思い→専門学校では、異文化を取り入れて調子に乗っていてもダメを象徴する場面。ここでの異文化は、作品のテンポに合うものを持ち出す。白鳥の湖などでは、この作品の流れに合わないと判断した。また、そういう身勝手が出来るテンポを、このあたりまでに構築しておく必要がある。

 途中の踊り場にいたいつも物静かな望月俊哉は、下から振り上げられたござるの太刀を浴びて、物静かなキャラクターとは思えない叫び声をあげた。
「うがぁぁぁ、痛いぃぃぃぃぃ。駄目だぁぁぁぁ、助けてくれぇぇぇぇ」
 饒舌になり、踊り場を転がり回る望月を飛び越えて、ござるはさらに羽音を追いかける。

作者の思い→専門学校ではおとなしいだけではダメを強調した場面。

3階に到着すると、階段ホールの騒ぎに興味を持って駆け付けた好奇心旺盛の吉岡美智子に一撃を加えた。

作者の思い→専門学校では、興味を持って近づくだけではダメを象徴する場面。

「寄らば、斬る」

 惨劇を目の前にした正義感の強い八木正人と、目で合図を受けた大友智がござるを止めるべく飛び掛るが、十文字を描くようなござるの太刀捌きに、あっという間に気持ちごと斬られた。

作者の思い→専門学校では、優等生というだけではダメだし、受身なだけではダメを象徴する場面。十文字にも意味合いが込められている。アーメン。

 そして最上階、ついにござるは羽虫を追いつめた。

 窓もガラス戸も閉められた空間で、羽虫は覚悟を決めたかのように、行き止まりのガラスにはり付いた。
「ここまでだな」
 相手に聞こえないほどの小声で脅しを掛けると、じりじりと間を詰めるござる。
しかしござるは思った。これまで何度も切っ先を見切られている。ここで逃してなるものか。少しでも悟られないように一工夫必要だ。
「道路によく落ちている軍手の術」

単純に気配を消す術とするのではなく、印象的に登場させて、エンディングにつなげる伏線とする。

ござるは自分の気配を消した 。そしてまた一歩羽虫に近づき、とどめを刺そうと身構える。
「人騒がせな奴め」
そう言いながら太刀を振り下ろしたと同時に、頭頂部に一撃を浴びた。気配を消したはずなのに。

冒頭部分で修行中であることは説明済み。〆部分に絡む出来事。

「お前が言うな」
 背後にいたのは、情報分析のスペシャリスト渥美亮一だった。
 校舎内の騒ぎの情報を集め、分析と自分に何が出来るのか考えた結果の対応が、掃除モップで一番の隙が出来る攻撃の瞬間を狙うことだった。

結局この専門学校で被害に合わなかったのは情報分析と対応が出来る人物だったといいう作者の思い入れの部分 モップを使ったのは『ござる』を掃除するという意味合いも込めてます。

「痛っ」
 頭を押さえてうずくまるござる。手にしていた太刀は、最後の砦だったガラスを貫き、大きく開いた穴から、羽虫は悠々と出て行った。

たいがい修行を邪魔するものは、何のお咎めも無く我関せずであろうという作者の意見部分。

 だから、これに続く〆は?と言うことになる。
 注意!この状態では落ちておりません。
      最後の文章をかえて、この作品を〆るにはどうすればいいでしょう?
      何を利用すればいいのでしょう?(解説文に書いちゃってあるけどね)

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2 thoughts on “GOZALU 解説

  1. えっと。こういうの初めて読んだのですが、
    これが世に言うライトノベルというものなのですか?
    ちょっと付いていけなくてごめんなさい~!

  2. 書き込みありがとうございます!
    これは僕が指導している学校で、生徒さんに向けて書いたものです。
    企画の講義の時に、TPOが必要だという事で、タイムリーであること、この場ならではのこと、興味深いことの3つのポイントで書きました。
    人物名の所は、実在する生徒の名前を入れて『その場ならでは感』を出した所、いつもはガチャガチャして大騒ぎの講義中も、文章に熱中しておりました。

    ライトノベルとかそういった分野にこだわっていません。
    そういう『こだわり』を持つと、世界が狭くなりそうですね。
    これからもグローバルな視野でがんばります!

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