ボケと突っ込み!!振りと落ち!!!

一部の物書きの中で、というか物書き未満の人の中には『最後の最後に実際に言わせたり説明してしまったら芸がないと思っていますので』などと言う人がいるようですが、それで『芸が無くなるようでは、しょせんそれまでの作品』ということでしょう。

しっかりとけじめをつけて伝えたいことが伝えられているかどうか?

想いというか作品のイメージが伝えられていなければ、芸があるとか無いの前段階の問題で、意味が無い作品となりそうです。

 

 

文の魂!失くした自転車!!

 駅前の交番に若い男が、ひどくあわてて飛び込んで来ました。
「大変だ大変だおまわりさん」
「どうしたんですか? 何があったんですか?」
 一人机について書類をまとめていた年配の警官は動揺することも無く、作業を続けながら対応します。
「自転車が、自転車が盗まれました」
 飛び込んできた男は、警官が仕事をしていた机に両手を突いて肩で息をしながらも大声で訴えました。
 警官は圧力を感じて、くるりと体を男の方に向けます。
「どこに置いておいたんですか?」
「駅のロータリーに、駅のロータリー脇に置いた自転車が盗まれました」
「駅のロータリー脇。ああ、あそこみんな置くからね。駐輪所じゃないのに」
 そう言いながらも、警官が机の引き出しから盗難届けの書類を出します。
「色は何色なの?」
「黒です」
「大きさは?」
「27インチです」
「タイプはどんなタイプ?ママチャリ?」
「いえ、スポーツタイプで、大きく見えますけど細くて軽いんです」
 警官の質問にテンポよく答える男。息もしだいに整って、落ち着いた様子を見せます。
 年配の警官は、相手を上手い具合に自分のペースに誘い込み、書類の仕上げに掛かります。
「なるほど。27で色黒のスポーツタイプ。細身で大きいけど見た目より軽い感じだね。それで名前は?」
「のり子です」
「のり子って、キミ男だろ?」
「あ、自転車の名前です」

時候のネタをどう入れるか???

ゴールデンウィーク中に高校野球の試合がありまして、春季高校野球の県大会。
カメラマンなんですがリポーター付きを命じられてディレクターを兼任したのです。

番組のオープニングで、実況解説席からリポーターが呼ばれて第一声の挨拶となるわけですが、ここで何を言うのか?

朝から日差しが強く、グラウンドは水を撒いてもすぐに乾いてしまうようです。応援スタンドはすでにいっぱいで、随時熱い応援をリポートします!的な文言で、リポーターが顔を出してアピールします。

リポーターさんが自分でまとめたこのリポートを聞いて、ディレクションを任されたぼくは、その時『ならでは』感を出したほうが良いのではないかと考え、次のリポート時にでも『藤の花が見頃を迎えるこの時期、藤枝高校の活躍を期待したい!』などと一文添えてもらいました。

このゴールデンウィークの期間中は、そのような『その時ならでは』の時候の挨拶を工夫しやすい。
例えば『夏も近づく八十八夜。茶葉に新芽が芽吹く頃、グランドにもニューヒーローが生まれそうな期待が掛かります』とか五月の空にこいのぼりが気持ち良さそうに泳ぐ風が時折吹いてきます。五月五日を前に、グランドで戦う若武者にどのような声援が飛ぶのか随時リポートしたいと思います。

多くのお客さんがすでに応援を始めていますってのは、いつでも言えるし誰でも言えるからね。『(自分)らしさ』をどう出すか?『(その時)ならでは』の感じをどう出すか?そうやって『自分に課題を出す』ことで成長していける糧に出来るかどうか?みんながプレイに夢中になっている現場で主観から離れ、客観的に現場を見て、誰も気づけなかったことをコメントすることで主導権を握れるかどうか?そこを楽しめるかどうか?

そんなことを考えていたら、カメラよりもそっちのほうが面白いのかも?って気になってきた。

チェンジ オブ ペース!!

文章に緩急を付けろ!
ゆったりのんびりとした場面とスピード感緊張感のある場面で書き方を変えてみてください。

ゆったりのんびり場面では、長くのんびりとしたキーワードなどを意識した文章。
スピード感を持たせるには、短い単語をトントントンと、テンポよくつなぐ文章。

街から少し外れた高台にあるこの白い建物は、夕日を浴びて静まり返っていた。周りにさえぎる物が無く、はるか隣町の山並みをも見渡せる。

背後からの怒声。反射的に振り返る。思わずバランスを崩し上半身が宙を泳ぐ。手すりに当たった手には、全身の力が一気に集まった。

2017年1月分 『どろネコ』

どろネコ
そのネコは、かならず体のどこかにどろをつけていました。
前足の先っぽだったり、シッポの先っぽだったり、鼻の先っぽだったり、耳の先っぽだったり。
なぜ、どろネコにどろがついているのかを知っているのは、その村の子供たちだけです。
田んぼの米を狙うネズミにちょっかいを出しているのを、学校の帰り道によく見かけていたのです。
「あいつ、また顔に泥がついてる」
「今日はあたまのてっペんにどろをつけてるぞ。米ドロボウのネズミをつかまえたのかな?」
「見て見て、今日は後ろ足にどろがついてるよ」
「気持ち悪いのかな? 足をブルブル振ってどろを落とそうとしているね」
どろネコは子供たちに何を言われようが、知らん顔でからだをペロペロと毛づくろいをはじめたり、にゃあと一声なくと、すました顔でトコトコと歩いていくのです。
イヌのおまわりさんという歌を覚えた子供たちは、どろネコは村のおまわりさんかも知れないと思うのでした。

その日もどろネコは村をウロウロして、ちょっかいを出そうとネズミやカラスをさがしていました。
すでに顔にどろがついていて、ときどきそれを振り落とそうと、プルプル足をふるわせています。
その様子を一匹のネズミが先に見つけ、急いで田んぼの近くにあった家に逃げ込んだのです。
「おや? 何だい? いまの影は?」
どろネコは見逃しませんでした。ネズミの後を追ってその家に飛び込むと、ネズミはテーブルの上にあったこの家のばあちゃんが作った料理をかじっていました。
これでは村のおまわりさんとしてだまっていられません。
「にゃあにしてる!」とばかりに
ニャアとなきながらネズミに飛び掛ると、ネズミもお食事チューと
おどろいてハネ上がると、空中でくるりとチュウ返りして、ネコパンチをかわします。
テーブルの上であばれる音を聞いたばあちゃんが奥の部屋からやって来て、部屋のすみにあったホウキをつかんで振り上げました。
ばあちゃんにはどろネコがじゃまになってネズミが見えていないようです。
「この、ドロボウネコめ!」
おどろいたネズミが逃げると、それを追い抜いてどろネコが逃げます。
追いかけるばあちゃんの目には、どろネコしか見えていないようでした。
「えい!」
ホウキのぼうが、どろネコのシッポをかすめて、勢いよく地面に叩きつけられます。
ばあちゃんはどろネコを追いかけながら、もう一度ホウキを振り上げました。
「まてい。この、ドロボウネコ」
ものすごい勢いで逃げながら、どろネコは思うのです。
『どろぼうネコ、どろぼうネコって、ぼうを持っているのはそっちじゃないか!』ってね。
 いつもはばあちゃんの田んぼを荒らしに来るネズミやカラスを追い払っているのに、今日はばあちゃんに追い払われているどろネコ。 
 でも、ばあちゃんが元気そうだからいいや。と思うのでした。

おしまい